単数と複数

英語でとても意識されるのに、日本語では無神経な感覚に、「単数複数」がある。英語だと「a cat」か「cats」かを明確に使い分けるが、日本ではどちらも「猫」である。

道を歩いていて、「あ、猫がいた!」という場合、そこに猫が2,3匹いようが、1匹であろうが、日本人は気にしない。「猫がいた」、「猫たちがいた」という使い分けは基本不要だ。5,6匹もいたら、「猫がいっぱいいる!」になるが、驚きの内実がすでに別のものになっている。

「古池や、蛙とびこむ、水の音」という芭蕉の句を学んだ英米人が、「先生、この場合の蛙は何匹でしょう?」と質問したとか。この生徒の頭の中では、何匹もの蛙がジャボジャボと池に飛び込んでいたのかもしれない。日英の差を感じる。

しかし、そんな日本人だが、絶対に複数と単数を意識する場面がある。それは、二人称の場合だ。「あなた」と「あなたたち」、「きみ」と「きみたち」、「おまえ」と「おまえら」。全然ちがう。

「おまえ、ええかげんにせえよ!」と「おまえら、ええかげんにせえよ!」では、想像する光景がまったくちがう。「あなたたちにお願いがあります」と「あなたにお願いがあります」とは、その場の空間の広ささえ変わってきそうだ。「きみら、おもろいなあ」と「きみ、おもろいなあ」を言い間違える日本人はいないだろう。

日本人も単複の差に神経質・・・というか、神経質以前の問題として、あまりにも自明のものとして単複を使い分けているのだ。ただし、なぜか二人称のときだけ。

おもしろいことに英語だと逆に二人称に単複の差がない。どっちも「you」である。ここまでくると、お前らわざと日本人に逆らって、英語つくったやろ、といいたくなる。
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by asano_kazuya | 2010-06-01 12:13 | 身辺雑記