お取り寄せ

だいぶ前に、「ある状況に接したとき、毎度毎度、意識しないのに自動的に、ある感情や考えが思い浮かんでしまうこと」を、「毎度思考」と名づけた。

その後、それに思い当たるものがあったら書いていくつもりでいたが、なかなか見つからなかった。最近、やっとひとつ見つけたので、書く。

それは、「お取り寄せ」という言葉だ。この言葉を聞くと、自動的にその後の展開を想像してしまい、パニックになるのだ。たとえば、電気屋に行って、「ああ、その部品はお取り寄せになりますね」といわれた瞬間――

「店員が、すぐにメーカーに電話する」
「そして、在庫があるとメーカーにいわれて、オレは何も言ってないのに取り寄せは完了する」
「そして定価で買わされるのだ!」
「他の店だったら在庫があって、2割引で買えるかもしれないのに……」
「現物を見てないから、もしかしたら気に入らないかもしれないのに……」
「取り寄せたから断れない!」
「すでに、自分に別のものを買う権利はないのだ!」
「キャンセルをしたくとも、『もう取り寄せちゃいましたよ。迷惑なんですよね、お客さん』と怒られるに違いない」

小売店の人とメーカーの人が怒ってる顔が次々と浮かぶ。気に入らない商品を高い値段で買って、落ち込む自分の姿。

「終わりだ。もう終わりだ。ああー、もうだめだー!」

……という妄想がむくむくと湧いてきて、パニックになる。

特に、「ああ、それはお取り寄せになりますね……」といいながら、店員が何かを取るような仕草をしたら、もうダメだ。その手は電話に伸びるに違いないと思い、逃げ腰になる。本当は、単に、俺にパンフレットを見せようとして動いたのに過ぎないのかもしれないのに……。

「あの、あの……いんです。ホントは欲しくなかったんです。いや、そういうワケじゃないんですが、その……お取り寄せをすすすする前にですね。なんとか、検討させてください」と、妙に強張った返事をしてしまう。

そして、そそくさと逃げるように店を後にするのだ。いつも。挙動不審なのはわかっているが、やめられない。怖い。怖いのだ。
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by asano_kazuya | 2005-03-29 15:00 | 身辺雑記