生まれて初めて、警察手帳を見た

「あの……」
マンションの玄関を出ると、見知らぬ男が話しかけてきた。もしや、NHKの集金人かと心に暗雲が立ち込めかけた。しかし……。
「警察のものです」
男はそういって、警察手帳をビランと広げた。ドラマのように目の前ではなく、腰のあたりで、あたりをはばかるような見せ方だった。男は私服の刑事だったのだ。しかし、一見して、まったく一般人と変わらない。

「このマンション、管理人さんいます? あるいは管理組合ありますか?」
「いやあ、今はいませんねえ」
そう返事しながら、オレは疑っていた。もしかしたら警察のフリをして俺をだます気なのかもしれない。新手の詐欺かもと思ったのだ。

「実は……」
男は隣のマンションを指差した。
「ここのある部屋を見張りたいんで、このマンションの敷地内に、ひとり警察の者を立たせたいんですが、いいでしょうか?」

ああ、そういう話か。だったら、詐欺じゃなかろう。
俺は、自分はマンション住人の代表じゃないので即答はできないと伝えて、代わりに管理組合の理事長の名前と部屋番号を教えた。刑事は、軽く礼をいって、その場を去った。

5分ほどあとになって、「おお! ドラマみたい」と、じわーと感動した。
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by asano_kazuya | 2005-07-28 19:35 | 身辺雑記