完璧な仕事

今日、渋谷のあるうどん屋にはいった。ネットで評判を知った店だった。特にうまいというわけではないが、割りと有名らしい。実は、前に一度訪れたのだが、その時は開店寸前で、すでに人がならんでいた。基本的にならぶのが嫌いな人間なので、その時は入らずに帰った。

今日行ったら、特にならんでる人はいない。中へはいってカウンターに座り、「きつねうどん」を頼む。

隣で食ってる人を見ると、なんだか妙に量が多い。時間は4時。中途半端だ。急に腹がへってきたのだが、晩飯までのつなぎをめざしてたので、あまり多いと困る。そう思いながら、待つ。

意外と待たされる。それはまあいいが、なんだか臭い。どうも、店員のオバちゃんの化粧の匂いがきついのだ。そのオバちゃん、落ち着きがなく、店の外に出たり、客席の方に来たり、厨房に入ったりと、ウロウロする。そのたびに匂いが移動する。そのうち、食い終わった客がタバコを吸いだした。いつもなら、近くでタバコを吸われるとガッカリするが、今回はむしろ歓迎した。タバコのおかげで化粧のにおいがまぎれる。

やがて、うどんが来る。油揚げを見てぎょっとする。見た目がバリバリなのだ。ふつう、きつねうどんの揚げは、しっとりしてるのに……。まあいい。麺をすする。

ん?

味がしない。ダシがどうこうじゃない。うまいうどんは、麺だけでもうまい。しかし、この麺は味がしない。砂をかむようなというといいすぎだが、とにかく食った気がしない。それに、太さが不均一なので、ゆですぎで柔らかくなってるところと、固いところが混在していて気持ち悪い。

汁を飲む。薄い。ものすごく薄い。だしの味がほとんどしない。薄い塩味しか感じない。

あせってきた。これはもしかしたら、ダメなんじゃないか?

油揚げをかじる。

まずい。

あからさまに、まずい。甘すぎる。それに、バリバリ。

麺やうどんはまずいのではなく、味がしないのだが、これは本当にまずい。気持ち悪くなりかけて、あわてて麺をすすって、口の中から味を消す。

2,3口すすると、もう飽きてきた。というか、苦痛になってきた。「飽食、日本」という言葉や、「アフリカの飢える子供たち」の映像が脳裏にうかぶ。なるべく残すのはさけたい。店の人も気分悪いだろう。前に一度、中華料理屋で半分残したら、店長に悲しい顔をされて、「まずかったですか?」と尋ねられたことがある。その二の舞はさけたい。

もしかしたら、さっきのは思い違いかもと思って、もう一度油揚げをかじる。

やっぱりまずい。現実は非情だ。

こうなったらしょうがない。七味でごまかして食おう。そう思って七味をかける。

この七味がまた、臭い。

信じられないほど完璧! 完璧な仕事だ! 七味が臭いなんて、今まで体験したことがなかった。そのうえ、七味をかけると、汁の薄さがより強調されて、もう耐えられない。

思考が次の段階に達した。さっきまでは、残すか食うかどうしようか考えていたが、今はちがう。どうやって逃げようか、その逃げ方を考えていた。器の中には、うどんは半分以上残っている。揚げにいたっては、9割残っている。もう、いっそ、千円札をだまって置いて、何も言わずにでることも考えたが、それだと余計角が立つ。

勝手なイメージだが、化粧くさいオバちゃんに見つかると、舌打ちされそうだ。他に、若い女店員がいて、さっきから見てると、こっちは愛想がよさそうだ。ウロウロするオバちゃんがもっとも遠ざかった瞬間をねらって、席を立つ。レジは目の前にある。左腕で器を隠し、残しているのがわからないようにしながら、千円札を出す。

釣りをもらって、逃げるように出口に向かう。意外なことに、オバチャンは愛想のいい声でお礼をいってきた。「ありがとうございましたあ!」。厨房からも声がする。「ありがとうございましたあ! また来てくださーい」。

罪悪感でいっぱいだ。たまったもんじゃない。しかし、それにしてもきつねうどんを残したのは、生まれて初めてだ。オレが適当につくってももっとうまくできる。おそるべし、○○!(店の名前はふせます)





つーか、固定ファン多いみたいなんだけど、なんで?
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by asano_kazuya | 2005-10-05 18:40 | 身辺雑記