決戦日本シリーズ

阪神が阪急に買われるとか。

むかし、「かんべむさし」という作家が、「決戦日本シリーズ」という短編SFを書いた。セリーグで阪神が優勝し、パリーグで、今はなき阪急ブレーブスが優勝し、日本シリーズは、関西の、それも阪神間(どっちのホームグラウンドも西宮)だけでもりあがるという、超ローカルだが、そこに住んでる人間にはたまらなくワクワクする小説だった。

阪神間というのは、大阪から神戸へと東西に長い地域だが、その地域を北から阪急、JR、阪神の三線が、ほぼ平行に東西に走っている。でもって、大体、高級なイメージというのは、阪急沿線>JR沿線>阪神沿線であり、なおかつ、尼崎とか西宮、芦屋など、それぞれ生活文化がまったく異なった地域を串刺しにしていた。これらの町は東京でいうと、蒲田と武蔵野と松涛みたいなものだ。「決戦日本シリーズ」は、その辺の地域差も書き分けていて、メチャメチャおもろかった。

小説では、優勝した方が負けた方の路線に電車を走らせるという設定になっていた。阪神が勝ったら、阪急の線路を阪神電車が走り、阪急が勝ったら、阪神の路線を阪急が走るのだ。

その当時、阪神と阪急は今津という駅で、ほとんどくっついて存在していた。小説では、その状況を利用して、今津から乗り入れるということになっていた。普段今津を利用している麻野にとっては、それはも、ものごっつうリアリティのある話やった(実際は、高速神戸の方へいけば、乗り入れはもっと楽にできるかもしれないが)。

結末は二通り描かれていた。途中から上下に段が分かれいて、両方が勝った場合の結末が読めた。阪神ファンにも阪急ファンにも満足の結末だったのだ。ただし、実際のところ、阪急がパで優勝することはあっても、阪神がセで優勝する日が来るとは、阪神ファンの麻野でも、夢にも思ってなかった。そのころの阪神は信じられないほど弱かったのだ。

麻野がこの小説を読んだのは、中学か高校のころだった。やがて月日は流れ、阪急ブレーブスはなくなった。なんか、あっさりなくなった。西宮球場も、今はどうなったかしらない。競輪だか競馬場として残ったんだっけ? それとも住宅展示場になったんだっけ? それは南海の球場だったっけ? それで宮部みゆきの火車だったっけ? ……えーと、あいまいだ。ただ、あっさり消えたけど、心のすみで、「ああ、これでもう決戦日本シリーズはできなくなったな」と思ってた。

でも、まあいいや。阪神あるし、甲子園あるしと思ってた。最近は、優勝もするしと思ってた。

ところが、阪神が阪急に買われるという。

まさか、阪急タイガース? ええ! まじすか?!

子供の頃よく行ってた二大遊園地。甲子園阪神パークと宝塚ファミリーランド。両方ともなくなった。この上、阪神タイガースまで、阪急タイガースになっちゃうの? 関西の地盤沈下とかいわれるけど、もう勘弁してよといいたい。のこのこ東京に出てきてずっといすわってる麻野が偉そうにいえる話じゃないんだけどね。すんません。

気になるのは、どっちの車両になるかだ。でも、おそらく阪急だろうな。あの小豆色の車両の方が、阪神のツートンカラーより、どう考えても品がいい。となると、出屋敷や杭瀬を小豆色の電車が走るのか。淀川や鳴尾に小豆が……。阪神梅田駅が小豆一色……。

ああ、そうか。阪神百貨店も第二阪急百貨店とかになるのか。地下の立ち食いのイカ焼きにベルバラの模様が押されるのか。チャーメンに花組セットとか宙組セットとかの名前がつくのか。小豆色の電車に、禁治産者みたいな人やガラの悪い人間がドヤドヤと乗ってくるのか。黄色と黒の縦シマのかっこうしたタイガースファンが、六甲おろしを歌いながら、甲子園の駅から小豆色の車両にのって、梅田まで阪神線をひた走るのか。ああ、それもおもろいかもしれん。おもろいかもしれんなあ。

結局、思いもせんかった形で、かんべむさしの世界が実現するのかも知れんなあ。
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by asano_kazuya | 2006-04-18 20:19 |