早稲田で映画の授業「木村大作講師」

 昨日も早稲田に行ってきました。カメラマンの木村大作さんの講義です。話術が巧みで、会場、大うけにうけてました。

 「誘拐」という映画では、警察の許可なく銀座や新宿で5000人を動員して撮影を行ったそうです。もちろん、警官が取り締まりに来るだろうから、その対策に、スタッフに田舎者を演じさせたと。報道陣を演じる5000人の役者やエキストラが、いきなり銀座に現れて疾走しはじめます。それを見て驚いた警官がポリボックスから出ようとするのを、「和光堂はどこですか?! どこですか?!」と絶叫させて押しとどめさせたというのです。そのシーン、映画にちゃんと映ってるとのことです。

 また、いくら無許可とはいえ、せめて信号は守らないと警察に申し開きができないので、赤信号のあいだ、主役の渡哲也に転ぶ演技をさせて、それで時間をかせいだそうです。また、ついに見つかって尋問されたときにも、本当は責任者なのにバイトのふりしてしらばっくれたそうです。

 ちなみに、しばらく前に紫綬褒章もらったときに、このへんのことを文章にしてコメントしたそうです。道交法違反をした人間に勲章くれたという趣旨の文章です。


 驚いたことに、この「誘拐」という映画、もとは八王子や横浜が舞台だったのに、それだとつまらないからと、都心にかえたそうです。そのいいだしっぺと周りをくどいたのが木村さん本人で、「その方がいいからそうした」と。

 しかし、これはすごいことです。いくら「その方がいい」としても、予算や現実性を考えると、二の足を踏んでなかなかできることじゃないです。それを、カメラマンの立場でありながら、人をくどいて納得させたり、学生や仕事仲間に無料で手伝わせたりして予算もおさえて実現したそうです。

 私ごとですが、麻野も昔、実写のゲームを作るとき、渋谷で無許可の撮影をしました。上の映画にくらべると、規模は全然小さかったのですが、それでも本人にしてみたら悲壮な覚悟でした。警察につかまるときは、自分ともうひとりの撮影の責任者がつかまるてはずになっていました。留置所覚悟、前科者覚悟だったのです。

 なので、よくもまあ、銀座で5000人なんて、そんなことを考え付いて実行したなあと、驚くとともに尊敬してしまいました。

 基本的には、笑い話が主体でしたが、仕事への取り組み方が尋常なものでないことが端々から伝わり、何度か泣きそうにさえなりました。他にも、山ほど、いい話があったのですが、書ききれません。

 ところで、木村さんいわく、「女優の内幕話とか、オフレコの話はみんな喜ぶんだけど、最近はインターネットに書き込まれるから、怖くて話せない。みんな、オレが他でいうなって言った話は書くなよ」。先週、「世界の中心~」への文句言ってたのを書き込んだばかりだったので、ドキッとしました。

 なぜか、映画人は気になるらしく、今回も「世界の中心~」の映画の話がちょっとだけでました。木村さんが偉いと思ったのは、「自分のわからないことはしない。わからないことには首つっこまない」という態度をとったことでした。「自信もって仕事できないし、最近の若者は、というコトバを使いたくないから」だそうです。

 電車の中などで20代前後の若者が話しているのを聞いてると、「世界の中心~」映画の評判は、非常に高いです。見てないのでなんともいえないですが、小説読んだ限りでは、やっぱある種、麻野みたいなスレタおっちゃんとは、違う受け止め方をしてるんでしょう。そういう自分と違う世界の住人を相手にするか否かを考える上でも、木村さんの話は勉強になりました。

 あともうひとつ。結局、映画でもゲームでも、「いいものを作る」ということと「売れるものを作る」というのは、まったく違う次元の話だというのを痛感しました。そして、その「いいもの」でさえ、年齢や文化の差で、いかんともしがたい溝があるように思います。最近、「文学賞メッタ斬り!」を読み終えましたが、あれ読んでると、小説も同じなんだと感じました。もう、なんだってそうなんでしょうね。
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by asano_kazuya | 2004-06-09 14:19 | 身辺雑記