見切り方

 昨日の夕方、東西線に乗っていたら、どっかで事故があったらしく、止まってしまった。飯田橋の駅で。早稲田に行く予定だったので、あと二駅というところ。おしい。

 すぐに動くかと待ってたら、割と早々と「JRで振り替え輸送してる」とのアナウンスがあった。何人もの人が、舌打ちをしたり、時計をイライラと見ながら足早に電車を降りていった。ワシはまあ、10分もすれば動くだろうとタカをくくって、本(「ブランド」)よんでた。

 10分たち、15分、20分……。放送は5分ごとに、振り替えの利用をよびかけてる。そのたびに、今まで待っていた人も、ガマンできなくなって立ち上がる。で、いつもなら、ワシもこの辺でしびれきらしてJRに行くんだけど、今日は時間に余裕あったので、一度とことんまでつきやってやろうと待ってみた。

 くやしいんだよね。何分か待った時点で別のルートつかった途端、復旧したらね。

 JR使ったら飯田橋から新宿経由で高田馬場。そっから早稲田まであるいたら、まあ、30分はかかるだろう。30分以内に復旧したら、まちがいなく待ちの勝ちだと思ってた。

 30分超えた。その時点で、「歩き」も考えた。でも、昨日は暑かった。なので、やめた。

 35分をすぎると、もう電車の中はガラガラだった。夕方の東西線とは思えない。1車両、10人も乗ってない。残ってるのは、みんな我慢強いか、ヘソ曲がりか、よほどのヒマ人だろう。この際なので、しっかり顔を見てやった。

 40分くらいで、となりに座って本を読んでた若い女が意を決してように立ち上がった。今まで気づかなかったが、美人だった。意思の強い足さばきで、ホームをずんずんと歩いていく。ついに、ワシの座ってる座席は、ワシ独りになった。女の姿が見えなくなった途端、アナウンスが復旧を告げ、電車は動き出した。

 あーあ、今の女、惜しかったなあ。あと30秒待ってれば動いたのに。そう思って勝者の余韻にひたりかけたが、いきなり可愛そうに思えてきた。なんか居心地が悪くなって、立ち上がり、あの女が本当に改札を出たのか確かめることにした。

 もし、改札を出る前に気づいたら、また電車に乗ってるだろう。そう思って、女が歩いていった方向に、電車の中をどんどん歩いていった。ちょうど進行方向に向かって。電車の後ろから前に向かって歩いていった。電車の中がガラガラなので、トンネルの中を高速で歩いてるような錯覚を覚える。

 1両目、いない。2両目、いない。3両目、いない。4両目、いない。

 アナウンスが、次の駅の到着を告げだした。5両目いない。6両目いない。釣り広告の見出しが気になる。松本大がどうとか、書いてる。SPAの見出しが扇情的だ。7両目いない。次の駅についた。神楽坂。ホームで大量の客が待っている。ものすごい数だ。みんな復旧を待ってたのか、安心したようなゆるい顔で、こっちを見てる。8両目いない。9両目いない。すぐにこの大量の客がガラガラの座席に向かって押し寄せてくるだろう。そうなるともう探せないなと思ったら、視界の片隅に、さっきの女が座っているのがチラっと見えた。急に立ち止まるのも変だ。次の車両まで歩いていった。電車がとまった。一気に混んだ。もう普段どおりの東西線だ。

 次の駅まで、ワシはまた本を読み始めた。
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by asano_kazuya | 2004-06-23 19:21 | 身辺雑記