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「ナウなヤング(死語)」という言葉がある。この言葉、おもしろいことに、生きてたときより死んでからの方が寿命が長い。「ナウなヤング」は死語だが、「ナウなヤング(死語)」は現役だ。

確か麻野が高校生くらいのときにできた言葉だと思うが、そもそも「ナウな」ではなく、「ナウい」だったはず。形容動詞ではなく形容詞だ。ところが、いつの間に「ナウな」になっていた。そっちの方が、より野暮ったくて、「(死語)」をつけるにふさわしいということか。

この「ナウい」が、当時世間でどういう受け止められ方をしていたかというと、まあこんな感じだ。(以降、すべて麻野の独断と偏見に基づく)

1:都会の若者が使う、先端の言い回し。憧れ。
2:「若者言葉の乱れも、ついにここまできた。英語に「い」をつけるなんて、無茶もいいとこ。」という良識的な大人の嘆き。
3:なんとなく座りが悪い。
4:アホか。(鼻で笑う)

3と4のは、まあ同じようなもんか。で、数字としては1が0.5%、2が10%、3が90%だ。まあ、ほとんどの人がとまどっていた。

「ナウい」の歴史はこんな感じだ。きっと。

1:たまたま東京で、「ナウい」という言葉を使った若者がいた。それが8割の「バカバカしさ」と、2割の新しさで少しだけその周辺のグループで流行った。
2:それを聞きつけたマスコミが、大々的にあおった。オッサンは嘆いたりあきれたりして若者を攻撃するネタになった。
3:あまりに座りの悪い言葉なので、実際はほとんどの人間が本気では使わなかった。
4:あっという間にすたれた。

当時、関西にいた麻野の仲間内で、この「ナウい」という言葉を日常使う人間はいなかった。ただ、露悪的に、あえて使うことはあった。そのときは、ニヤニヤしながら、今からすごく恥ずかしい言葉を使うぞという雰囲気を満面に漂わせながら、「おお! ナウいのう!」とあえてオッサンくさくいうのだ。今で言うと、受けないのをわかっててあえてそれを逆手にとって、親父ギャグを言うノリといおうか。あるいは、「それってなに? ナウい……とかいうやつ?」みたいな思い切り腰の引けた言い方をした。関西圏以外でどう受け止められてたかは、知らない。

逆に、もしも日常会話で、スラッと「ナウいね」なんていおうものなら――たとえば、こんな会話があったとしたら、

A:ほら見て。新しいウォークマン買うたんや!
B:うわ! ナウいやん!

おそらく、Bは言語センスを疑われて、もう誰からも口を聞いてもらえなくなったであろう。そういう意味では地雷のような言葉だった。

だから、「ナウい」の寿命は短かった。高校のころに「そんな言葉がある」と知って、、20歳のときはすでに「なんだかしらんが、ちょっと前に流行った(というか、流行ったとマスコミが言ってた)言葉」になっていた。おそらく、寿命は5年もなかったと思う。

本来ならそのまま消えるはずの言葉だったんだと思う。「チョベリバ」とかと同じような運命だったはずなのだ。

ところが、それからしばらくして、全然関連のない話だが、「死語」という言葉が流行った。「死語の世界」とかいう本まで出た。

この「死語」という概念は新しかった。「ナウい」という言葉の「新奇さ」とは比べ物にならない、本質的な「新しさ」があった。というのが、それまで、「流行りモノ」というのは、新しいものばかりだったのが、この「死語を楽しむ」というのは、「後ろをむいて楽しむ」、「過去を笑う」という点で、今までにない感覚だったのだ。

ちなみに、この「死語」ブームの前にも「レトロ」ブームというものがあったが、こっちは、今の「昭和30年代ブーム」に近くて、割りとマジメだった。その分、つまらない。「死語」ブームの方が、色んな意味でラジカルだった。というか、もう立派に普遍性を持ってる。今でも、中途半端な死語をあえて口にするのは、飲み屋での話題としては十分楽しい。いかに中途半端な死語を発するかかと言うのは、素晴らしくセンスが問われる行為だからだ。

その「死語」が、「ナウい」とくっついた。まさに、その「死語」ブームの中で、ちょうどピッタリ「死語感」が合ったのが「ナウい」だったのだ。

最初に「ナウい(死語)」という言葉を目にしたとき、麻野はひどく受けた。大笑いしたし、「うまいこというなあ」と感心した。やがてこの言葉は一大ブームとなり、そのうち、書き言葉ではなく、口で言うときも「ナウイ、カッコ死語カッコとじる」と神経症的に言うくらいに流行った。さすがに今では手垢にまみれてしまったが、今でも、「ナウイなあ、カッコ死語」というヤツは、まだいる。もうええ加減にせえよと思うが、まだいる。まったくナウくない話だ。

で、おもったんだけど、なんで、「ナウい(死語)」がこんなに流行ったかというと、相反する理由が二つ考えられる。

一つは、みんな、心の底では「ナウい」という言葉が大嫌いだったのだ。嫌いだったんだけど、流行ってるし若者の言葉としてもちあげられてるので、おおっぴらに嫌うこともできない。そんなとき、「ナウい(死語)」と言う言葉が発明されたんで、喜んでバカにする意味で使い出した。

もう一つは、みんな、心の底では「ナウい」と言いたくて仕方がなかったというもの。言いたかったんだけど、あまりに新しすぎて恥ずかしかった。その照れ隠しを、「ナウい(死語)」が担ってくれた。

とまあ、矛盾する二つの理由だが、人によってどっちかが正解だったんだろう。そして、それに「ヤング」がつき、完璧になった。

「ヤング」はもう、あまり言及する気はないが、確かに、「死語」ブームの頃、きっちり「死語」になっていた。服屋で「ヤングもの」という言葉として生きてるのが精一杯だった。つーか、「服屋」という言葉も死語だな。そういえば、この前、青山あたりを歩いてて、「うわー、この辺、服屋ばっかりやなあ」と声をあげて、周りの女子から「おっさんくさ!」とバカにされたのを思いだした。今はブランドショップというらしい。はあ……。
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by asano_kazuya | 2007-03-27 12:32 | 身辺雑記